歌うクジラを読んで
- 作者: 村上龍
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2010/10/21
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福岡行きの飛行機で読了。すごく読むのに時間がかかりました。通勤や出張移動時などのスキマ時間に読んでるのでスケジュールの都合でまとまった時間が無い期間だと読み進まないということもあります。しかし、寝る前に読むとか、風呂で読むとか、読みたい時にはどうしたって読めるのですが、「歌うクジラ」の作品性というか、村上龍という作家性というか、とにかくそういう気持ちが起きなかった。特に上巻が進まない。冒頭からしばらくは重いし、痛いし、汚いし、辛い。しかし結論として、面白かったと思います。上巻の2/3ぐらいを読み進んだところからそれまでの修行のような伏線消化が貯金となって楽になってきた。下巻は一気に読めます。
同じ村上作品の2000年「希望の国のエクソダス」、2005年「半島を出よ」と続く日本の社会問題をえぐる流れの中で、今作はかろうじて日本だけどややシンパシーの感じにくい未来が舞台、詰め込み続ける社会科学的な情報量が溢れた、というところで、前作から5歳、前々作から10歳、と加齢している私向けじゃなくなってるかなと。究極格差社会が描かれるのですが、私はどちらかというと「出島」よりは「老人施設」側だろうし。これはぜひアンダー30のプチ反社会的な方々に読んでもらいたい。アラウンド40は読まなくていい、と思う。面白いけど。
で、これをiPadの上で読むのか〜(この「歌うクジラ」は紙に先行して電子を出している)。読了するには相当気合が要りそうだ。ユーザーインターフェイスしかり、デバイスの性能しかり、これだけの尺の作品を電子で消費させる環境はまだまだ整ってないと思うけどな。