-NPO法の効果

http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/OPINION/20070723/278006/?L=rss
via Matzさんにて先週の記事。上記記事では後半にSeasarファウンデーションの存在についてプラス評価で紹介いただいているように思いますが、この視点は実はOSS開発コミュニティの施策として議論する際にあまり指摘されない点であったりします。NPOの存在意義としては、第一に法人の存在でしょうか。任意団体と異なり、権利義務の主体となりえる人格を持つのは微妙に賛否あるも分かりやすく効能がある。加えて、記事でやや触れているけど普段はあまり指摘されないこととして、1)OSS開発コミュニティにおける、2)NPO法の効果があるかと思います。記事で言うところの「勝手なことができない」という点。
1)コミュニティは種類を問わず知的財産と潜在的に関係深く、コミュニティが特にOSSコミュニティだと知的財産はソフトウェアに関連するものとして顕在化します。OSSコミュニティが特に開発するコミュニティであれば、知的財産は自らが所有し再生産を行う対象であり、何らかの管理が必要となります(管理、というのは積極的なものだけでなく、ライセンスの表示とかの手数少ないものも含まれ、さらには何もしないというのもあまりに消極的だと思いますが、必要とされる管理に対する施策の一種です)。
2)NPOが知的財産を所有管理する主体になりえる(推定しやすい)のは法人だからですが、その人格権は構成者によって行使されるものです(このへん、厳密な法解釈とは言えませんが)。NPOならばその構成者とは社員、俗に個人会員や団体会員と呼ばれる人たち。法人は株式会社などの会社法の定められる法人のほうがなじみ深いのですが、こちらとの違いは、排他性、寡占性にあります。株式会社の社員(従業員ではなく、俗に株主と呼ばれる)は誰もがなれるとは限りません。未公開会社では第三者は容易に株主にはなれませんし、公開会社でも昨今では「望ましくない株主」に対する防衛策が議論されたりしています。しかし、NPOは法に定めるところとして非排他です。希望する第三者に対して社員になることを妨げられません。もうひとつ、株式会社は資本主義ですから出資の割合に比例して議決権の大きさが変わります。しかし、NPOは1,000円の会費を納入した個人会員と、1,000,000円の会費を納入した団体会員とでも議決権は等しく、単純な頭数での議決が行われます。まさに非寡占と言えると思います。
つまり、OSS開発コミュニティがNPO法の下で運営される場合、特にその成果物たるソフトウェアプロダクトについて、関わりたい気持ちを持つ人すべてに門戸がひらかれていて、かつ誰かの強権によって特定の個に対する門戸が閉ざされるようなことは無い、といえるでしょう。NPO以外の選択をしたとしても上記効果は出せますが、それは法で担保されたものではなく、あくまで中の人の好意と常識に委ねられるということは知っておくべきです。それはビジネス上のリスクになりえるかもしれませんし、そもそもそういった好意と常識をもつ中心人物に感謝の念を抱かねばなりません。たとえばRubyのMatzさんはその思想や宗教的背景も含めて相当な人格者です。本来好き勝手やっていいのに多くの場合に皆の期待に応えてくれているところ、その観点でもっと感謝されてしかるべきだと心底思います。一方、NPO法の下で非排他非寡占に運営しなければならないので、誰がやろうとも特定非営利活動法人Seasarファウンデーションはコミュニティ的にも、ビジネス的にも、構造的におかしなことにはならないはずです。日常的におかしなことは起きるだろうけど、世論にて修正可能なはず。
ね、その点ではNPOって素晴らしいでしょ?法律全体として見ると細かなところ抜けの多いザル法で、どうにもならんのですが。