-IPAX

Seasarの定款変更を法務局に提出の後、有明の国際展示場で今日より開催のIPAXに行ってきた。京都大学末松千尋さんが「OSSはビジネスになるのか」というテーマでセッションされるのでそれが目当てである。セッション後はやはりOSSをテーマに、末松教授も残り、OSCJ.net/OSCな人たちが普段の肩書きで加わってパネル・ディスカッションが行われる。
さすがにビジネス・スクールの教授だけあって、OSS総論の根幹たる無償/無料の利についてアカデミックなアプローチで分析されていた。商取引一連のトランザクション・コストのモデルを示した上で、OSSがそのモデル上にていかに破壊的なパフォーマンスを示すかということを図示する。いままでの、「OSSを使うと仕入が只だから」というような荒い議論と内容は同一ながら、重厚な論の展開が新説かと見まがうばかりに繰り広げられる。トランザクション内のステージをきちんとセグメントすることによって、企業のOSS導入という一種の投資行為について、明確なROIを観測するという。ROI観測の重要度はさらりと述べられてしまったが、企業活動においてこれ以上に重要な意思決定指針は無い。ROIの「見える化」なのである。ROI重要。
各ステージ毎ではこれまで有償であったものが無償になってしまったライセンス・コストだけでなく、ディストリビュータの存在(ここに私は小異あるが大同)のほか、抽象的に、取引主体間の「インターフェイス」が顕在化(もしくは共有化、既知化か?)されるだけでもトランザクション・コストの軽減につながっていくと説く。私的に噛み砕くと、氏が別文脈で取り上げていた「デファクト・スタンダード」パワーの源泉もこのインターフェイス論で説明できそうであり、また別文脈のブランド戦略の利にも通じていく。
ならば、とパネルの最後にマイクをもらい「OSS開発コミュニティのフィードバック・トランザクションについて、インターフェイスを顕在化させることに注目することは是なのか」と満を持して(要は策士であるモデレータ氏の仕込みなのだが。苦笑)質問したところ「それは有効な手段」とお答えいただいた。繰り返す。「有効な手段」である。インフロー・インターフェイスが不明瞭ならばいつまでたってもSeasarファウンデーションの、ひいては日本のOSS開発者にとっての未来は無い、ということだ。
今日は正直さまざまな意味で自信をもった。ひとつは今日のアカデミックな論証にてSeasar現象を部分はキチンと説明できるという点、ふたつは今後の施策についてSeasarアライアンス先企業を巻き込みながらリアルな活動の質向上を目指す点での論拠固めを進められた点、みっつめはそうは言いながら、最高峰に近い方の議論でも、Seasar現象のセントラル・ドグマである開発コミュニティ論には踏み込まれてなかった点だ。たぶんファウンデーションの運営者として、この未踏のコアな論議について、今後も仮説検証を繰り返していかなければならず、逆説的に、だからこそしばらく我々の他の誰にも論じることができなさそうだと傲慢にも思えたのである。このドグマ解明が遂げられたのであればビジネス・スクールの客員講師ぐらいにはなれるかもしれない。いや、いかんいかん。先に年長の羽生さんをアカデミアンとして送り込んでおこう。私は現世利益を追求する。
まぁ、いつもとキャラが違うのは気分が盛り上がったので意識して角谷さん風な文体メソッド発動中なのだ。ネタだ。他意はない。